月百姿について

月百姿について


幕末から明治期にかけて活躍した月岡芳年。
中でも最晩年の傑作と言われている「月百姿」。
大胆な視点から切り取った迫力のある構図や、月夜の静かさがしみわたるような静謐感は現代の我々が見ても新鮮な魅力にあふれています。

「月」は世界のどこからでも臨むことができることから、世界中の文化・芸術において様々なモチーフとして扱われてきました。そういった万国で馴染みのある「月」というテーマだからこそ、それと比較した上での日本的な感性を改めて海外に強く印象付けることができるのではないかと考えております。
日本では、「月」は万葉のころから単体としてではなく、折々の情景、情感とともに表現されてきたので、海外に発信できるかと思っております。
また、芳年の画は、単に日本的な要素が多分に描かれるだけでなく、描写の豊かさにより、その背後にある歴史・物語へと鑑賞者を誘います。
浮世絵の鑑賞は「見る」のではなく、そこに描かれたものを読み取る、すなわち「読む」ものといわれます。「月百姿」は、まさにその「読む」対象として最適な作品と感じております。